望郷と自然を詠んだ詩 李白

 

静夜思

 

中国の小学生が皆学ぶ有名な詩です。

静かな夜に思う

床の前に明るい月光が射している

あれはもしかして、地上に霜が積もっているのでは?

頭を持ち上げて明るい月を眺めてみた

そうすると、故郷を思い出され、頭をうなだれた

 

【分析】

「月光」「霜」、二色の色彩的効果冷たさと静けさを感じさせる自然描写。ちょっと寂しい気持ちが湧き上がってくる。”疑”としたのは、寂しい気持ちから起こった錯覚じゃないのか? 地上にキラキラ光って見えているのは、月光が見せた錯覚か、それとも霜なのか・・・。(昔、中国では霜は天から降ってくるものと思われていた) ハッとして空を見上げてみると、まるまるとした月が明るく光っている、思わず、ふるさとの山や川、家族などを思い出された一瞬だっただろう。思えば思うほど、望郷の念は深まるばかり・・・その想いの中に沈んでいくように、頭をうなだれたのだ。

【背景】

この漢詩は口語的。だから誰でも読みやすい。李白は仕事がら色んな地方へ行き、生涯ふるさとから離れて過ごしたが、やはりどこへ行っても”ふるさとを思う心”というのが心から離れなかった。古今東西、この心は誰にでもあるだろう。李白は「放浪の詩人」とも呼ばれるが、この寂しい夜にひとり、どんな思いでこの詩を詠んだのだろう・・・。

廬山の滝を望む

廬山の滝を望む

日は香炉を照らして 紫煙を生じ

遥かに看(み)る 滝の前川に掛かるを

飛流直下 三千尺

疑うらくは 銀河の九天より落つるかと

【分析】

香炉峰にもやが立ち込めている。これを夕陽(?紅い太陽)が照らし、そのもやが紫色に見える(うわぁ・・・きれいだろうなぁ!)。遠くを見ると一本の巨大な滝が流れている。目の前の川に掛かって(落ちていって)いる。その滝は直下に落ち、その長さは三千尺(そのくらい長い!)。まるで、銀河が九天(天を九層に分けた一番上の層)から落ちてきたようだ!

【背景】

江西省の名山廬山の香炉峰の壮大な景観を詠んだ詩。比喩を巧みに使い、その自然のダイナミックさを表現している。