酒の詩人 李白

 

山中与幽人対酌

この詩はすごくおもしろい!李白のユーモアが伝わってくる詩。

山の中で幽霊と対酌する
(与=〜と / 対酌=酒を酌み交わす)

両人(二人)が対酌すると、山の花は開く
一杯・・・一杯・・・また一杯
我は酔うた、もう寝たい。
卿(君)はもう去って(帰って)いいよ
明朝、もし気が向けば琴でも持ってまた来てくれたまえ。

李白は誰とお酒を飲んだつもりになっているのかというと、もちろん本当の幽霊なんかではなくて、陶淵明(李白と並んで「酒の詩人の双璧」と言われた)と対酌しているつもりなのだ。何故、「幽人」が「陶淵明」と分かるのか?それは、「我酔欲眠卿且去」というこの句、実は陶淵明の伝記の一説とほとんど同じ描写で使われているからなのだ。

月下独酌

こんな風に独りでお酒を飲めたら楽しいだろうなぁ・・・

月の下で独り酌す

我は一壺の美味い酒を準備したぞ、
それを花と花の間に置いて独り酌す、
一緒に飲む家族も友もいない。
杯を持ち上げ、あの美しい明月を誘おうではないか、
これで三人で飲むも同じだ
(三人:明月と李白本人と、その李白の影を指す)。
でも、月はこの酒の美味さを知らないんだなぁ・・・、
影よ、おまえだって、ただ孤独な我の側に付き添っているだけだ。
まぁ暫時、月と影と一緒にいよう。
きっと春の夜なのだから楽しくなってくるだろう。
我が歌うと月がそれを聞いて徘徊し始め
(落ちていかず、ずっと空にのぼったまま)、影は我と共に踊り、
我が踊る姿と地を踊る影とが交わったり重なったり・・・。
酔いが醒めた時一緒に楽しもう。
酔いが醒めた後各々別れなければならないのだ。
天にある月よ、我は君と永遠の友情を交わしたい、
遥かなる銀河でまた会いたいものだ。

贈内人
李白が妻に送った唯一の詩(当時、男女差別の激しい封建社会の中で、妻というのは世間では地位がなく、正面をきって「妻に贈る詩」を書いた詩人は少ない)。 玄宗皇帝の付き人となるまで上り詰めた李白だったが、三百六十五日(詩中は三百六十日)酒ばかり飲み、泥酔していた李白。かの有名な(当時から名を馳せていた)”あの李白”の妻であろうと、ただ人の妻と何も変わらん、気の毒にのぉ・・・といった気持ちを表したもの。
月下独酌 四首連作の第二首

天がもし酒を愛していなければ
酒星は天にはない
地がもし酒を愛していなければ
地に酒泉はないのだ
天地が既に酒を愛しているのだ
(私がこんなに)酒を愛するのも
決して天に羞じることではない

ここまで酒を愛せたらほんとにすごいっ!