王維 自然の詩

竹里館
独り竹林の奥深くに座り、

琴を弾き、また口笛を吹く。

竹林は深く人は知らず、

明るい月が私を照らしている。

【分析】

竹林の奥深くで琴を弾き、口笛を吹いている(昔、口笛は情緒あるものとされていたようだ)。ただ、月だけがこの調べを聴いている。

この詩が素晴らしいのは、音響と静寂の対比、また光と影の明暗の絵画的表現がみごとであること。静寂の中に音楽があり、月光に照らされて竹林がある。なんとなんと、すばらしい!詩の中に”音”と”画”がこんなに素敵に表現されてる! 目の前に竹里館が現れ、私までその月光の下で竹林の中、琴を聞いている気分になる。

【背景】

「竹里館」とは、実際に存在した庵の名前。竹林の中にあったことからこの名が付けられた。この詩には、作者の隠居生活のゆったり感と優雅さが表れている。「隠居生活はこんなに楽しいんだぞぉ〜」と言わんばかり。

   
鹿柴

空っぽの山に人は見えない

ただ人の声が聞こえるだけ

夕陽が深い林の中に差し込んできた

またその光が苔(こけ)を照らしている

【分析】

人の姿は見えないけど、人の声は聞こえるくらいの山里。でも、ガラン・・・としててとても静か。静寂の中だけど、”動”がある。この詩のすばらしさは何といっても、この色彩感覚! 奥深い林に差し込む黄金色の夕陽。苔はその夕陽に照らし出されキラキラし、また青さも深みを出している。ああ・・・なんと美しい・・・

【背景】

”鹿柴”とは、”鹿を阻む柵”の意味。でも、実際は地名かもしくは、王維が暮らしていた別荘の名前。