茶道の概念

 

中国茶道とは?
 この質問にはそう簡単に答えることができない。老子が言った言葉に、“道可道、非常道。名可名、非常名。”という有名な句がある。つまり、「“道”は“道”であっても“非常(尋常ではない、語ることのできない、非常に意味深い)”道である。名はあっても(“道”とは単純に呼んでも)、“非常”の名である。」というほど、“道”というこの一文字を語ることは難しい。だから、“茶道”とは一言で言っても、哲学者でも歴史家でも科学者でも茶道家でも何でもない私がそれを的確に正確に述べることはできない。

 では、“わたし流”の解釈で“中国茶道とは何か?”を述べると、

1. 茶葉を一番おいしいお茶にして頂く方法
2. お手前に規則や規律はなく、一番合理的に自由においしいお茶を入れる方法
3. 人をもてなす心

と、こうなるだろう。でも、それだけじゃよく分からないので、少し調べた内容を以下に記す。


中国茶道の思想
 中国茶道は儒教思想を核に、儒教・仏教・道教の思想の影響を強く受け、三つの思想が一体となったものである。
以茶利礼仁 : 茶でもって礼儀と仁義とする
以茶表敬意 : 茶でもって敬意を表す
以茶可行道 : 茶でもって“道”を行く(真の“道”を進む)
以茶可雅志 : 茶でもって品格と徳をもつ

 

中国茶道の精神
 ここでよく比較されるのが、日本の茶道だ。私は日本の茶道についてはまったく知識がないのだが、中国と日本の茶道は様々な部分で異なっているそうだ。日本の茶道は中国から伝わってきたにも関らず、その思想・精神・規律まで、中国のそれらとは異なっているようだ。以下は、中国茶道との比較で、中国側で認識されている日本茶道に対する評価内容である。


 日本茶道の基本精神
一. 和・・・主人の客人に対する“和(なごみ)”と“調和”の心
二. 敬・・・お互いに認め合い、お互いに尊重しあい、礼節礼儀を尽くす
三. 清・・・人、茶具、環境のすべてが清潔で清楚であること
四. 寂・・・茶事を行う際には安静で厳粛であること

 中国茶道の基本精神
説一 : 清、敬、怡、真 (台湾中華茶芸協会)
説二 : 廉、美、和、敬 (中国大陸茶道学者)
説三 : 和、静、怡、真 (“武夷山お茶博士”と呼ばれる林治氏)
説四 : 美律、健康、養性、明倫 (陸羽茶芸センター)
説五 : 中庸、倹徳、養気、品味 (高雄市茶芸協会)

中国の和、静、怡、真について

美律、健康、養性、明倫について

 

中国茶道と漢詩
 「詩経(shi1 jing1)」とは、中国史上一番古い詩集である。その中にも茶と関係のある詩が多く残されている。

“誰謂茶苦、其甘如斉”
 誰が茶は苦いと言ったのか、それはナズナのように甘いのだ

 晋の時代には、詩人張孟陽が《登成都楼》の詩中でこのように茶を賞賛している。

“芳茶冠六情、溢味播九区”
香りのいいお茶は“六情”(たくさんの情、人間関係をつなぐ情)を得る、溢れるがごとくおいしい味は“九区”(多くの区、たくさんの地区、広地域)にまで広がっていく

 漢詩が一番栄えた唐代には、様々な茶に関する詩が詠まれた。李白、杜甫、白居易など、多くの詩人が茶に関する詩を詠んだ。


中国茶道と茶経
 茶経は中国茶道の核心であると言える。茶経が表現した内容は、大きく二つに分かれる。一つに、茶を飲む道・茶の芸術と技術・規則と飲む際の法則。もう一つに、茶道の思想。茶経に述べられていた思想とは、“茶之為用、味至寒、為飲、最宜精行倹徳之人”とある。つまり、お茶を飲むことを通して精神を磨き、自己を磨く、節約家で質素で高尚な道徳を持つ人となれ・・・という意味であろう。
 茶経が世に出た後は、多くの茶文化に関する著書が書かれた。中でも宋代に書かれた《大観茶論》は有名である。(《大観茶論》:宋代肯定趙佶(zhao4 jie2)(1082〜1135)が著した茶に関する専門論文、大観元年(1107年)に書籍として世に出た。)